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「どうしたルカ。さっきよりも甘い声だして」
バースローブの男がゆっくり立ち上がるとその日本人の顎を掴み深く激しいキスをする。
「う、ふぁ…、あ、んっ」
下から突き上げられ、キスの合間から漏れる声。
口の端から垂れる唾液が彼の首筋まで流れる。
「ルカ、ルカ。私の可愛いルカ」
口を離し、そのまま喘ぐ彼を男は「ルカ」と呼んだ。
そしてそのままこっちを見れば、そのバスローブの男はニヤリを口角を上げる。
そこからの記憶は曖昧だった。
案内の黒人に部屋から出されエレベーターに乗せられ、その足でカフェに帰り、
ウェイターに今日はもういいと言われて自室のベッドに行く。
その時の自分がどんな顔をして帰ってきたのかは知らないが、あとから聞いた話だと魂の抜けたようだった。と言っていたから相当ひどい顔をしていたのだろう。
後にも先にも隣りのホテルの注文はこの一度きりだった。
見せつけられるような行為。
バスローブの男はモーニングの時のマスターの視線に気づいていたのだ。
釘をさすような今回の事件はそれが関係していたのだろう。
ここまでの話をマスターは無表情で静かに話した。
俺は残りのクロワッサンを口に頬張る。
日本人の彼の名前はルカ。
マスターの話を思い出しながらルカという日本人を横目でもう一度見る。
彼の夜の姿はどれほど美しいのだろうか。
フランス人の男が「I resign.」という声が聞こえた。どうやらチェスは終局したらしい。
その後、ルカとフランス人は早々に席を立ち、カフェを出て行った。男はルカ細い腰に腕を回し、ルカもそれを嫌がる様子でもない。
今夜、あの彼はどんな姿で甘い声をあげるのだろうか。
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