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流れる佳と書いてルカと読む。これが俺の名前である。
名づけ親は“お父様”のゼヴラン・カミュ。自分という人間がはっきり確立した時にはすでに流佳だった。
カミュを“お父様”と呼ぶ子供たちは世界に何人もいるが、その中でも俺は特別な“息子”だった。カミュは“息子”たちに男を身体で悦ばせる方法を教えこむ。つまり俺を含めた“息子”たちとは男娼のことなのだ。
その中でも俺は一番の人気だった。アジア、ヨーロパ、アメリカと各国にパトロンがいて、流佳の時間を買うには相当な額を払わなければならない。しかもその中にはいくつかの特殊なルールがあり、それをやぶったパトロンは今後、流佳を買うことはできないという。
ここまでの待遇をつけているのは“息子"たちの中でも流佳くらいだ。
カミュはそれほど流佳を特別視していた。
カミュはいくつもの顔を持っている。
ある時は“お父様”
ある時は裏世界を牛耳る者
ある時はチェスのトッププレイヤー
俺はその全てを知っていた。知ることを許された特別な“息子”なのだ。
まわりと同じように身体の調教を受ける中で、カミュはチェスを教えてくれた。
俺はチェスがあるからここまで生きてこられた。
チェスをしている時だけは自分を自分として認められる。
きっと何物にもなれない自分を、チェスは流佳として見てくれるのだ。
チェスは俺の……
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