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早起きして、近所を散歩してみたことがあるだろうか?健康のためにジョギングやウォーキングをする人が意外に多いことに驚くはずである。もちろん、そういう人たちは当然のことながら早起きであり、それを日課としているのである。
もっとも朝が苦手な人にとっては、ジョギングやウォーキングをする人は「早朝からご苦労なことだ」…としか思えないかもしれないが、その「爽やかさ」は、一度でも体験してみると、意外とハマるものである。
考えてみれば、一日を大ざっぱに分ければ「朝」「昼」「夜」に三分割されるが、その中でもっとも神秘的な時間帯はやはり「朝」ではないだろうか。
昼は特殊な業種を除いてはほとんどの人が働いている時間帯であり、夜は独特の雰囲気を持つ怪しく、かつ感傷的にもなる時間帯である。それに比べて、朝、とりわけ早朝はまさしく神々の時間帯なのである。
まだ、ほとんどの人が眠りから覚めず、日中の大きさの数倍もあるオレンジ色に輝く太陽が登り始めるこの時間帯は、例え猛暑の真夏であっても、ちょっと冷気さえ含んだ爽やかさで、これから始まる一日のプロローグに相応しく、空気も新鮮だ。
そう、早朝という時間帯は、その日のすべてがまだ純粋な状態であり、汚れていない無垢な時間帯なのである。
この神々しい時間帯は、それを体験したものでなくてはわからない特別なものでもあるのだ。そして、その神秘的な時間帯では何が起こってもまったく不思議ではない。なぜなら人間が目覚める前の神々の唯一の時間帯なのだから…。
横山良太は某小売業の会社に勤務する四十八歳の男である。彼は、どちらかというと「朝型」の人間なのだが、もちろん以前からそうだったわけではなく、学生時代は逆に「夜型」の人間であり、大学の授業にもほとんど昼すぎから出席するような生活を送っていた。
しかし、社会人となり、規則正しい勤務時間に対応するため、必然的にそれまでの生活習慣を変えざるを得ず、そうなったにすぎない。
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