プロローグ

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ガラガラッ ローラーを転がす音が緊急病院の廊下に響く。 この病院で働く者にとっては何度も聞き慣れた音であり、何度も見慣れた光景だった。 「お兄ちゃん! しっかりして! 死んじゃ嫌だよ!?」 赤い血で学生服を汚した少女が動くベッドに歩調を合わせながら、何度も呼び掛けていた。 だが、ベッドに横たわる少年は 返事はおろかピクリとも反応がない。 「お願い、お兄ちゃん! 一人にしないで!!」 少女は溢れる涙とともに発したその言葉を最後に足を止めた。 扉の向こうへと運ばれる兄をただ見送ることしかできない無力な自分。 「何で私は...」 自己嫌悪に陥りながら少女は手術中と灯された赤いランプを呆然と眺めていた。
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