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それからというもの、あの人は千晶の中での憧れの人物となった。
あの人のようになるなんて烏滸がましいが、振る舞い方くらい参考にしたっていいだろう。
普段落ち着きがなく子どもっぽいと言われる千晶が、あの人のようにスマートな動作が出来たら、政宗達はどんな風に思うだろうか、なんて事を考えながら、千晶は顔を綻ばせた。
この事は、政宗達には秘密だ。
そう心に誓うと、千晶は興奮した気分を無理やり押さえつけながら、政宗達のところに戻ったのだった。
そんな決心から数日、千晶は毎日のように図書館に行った。
だがしかし、そうそううまくいくわけも無かった。
何故かというと、あの男の人に全くと言っていい程会えなかったからである。
よくよく考えれば社会人であろう歳だったし、毎日図書館に通うのは難しいだろう。
やっぱり難しいのかなぁ、でも、俺の理想像そのまんまだったんだけどなぁ、なんて思った頃、やっとあの人を見かけた。
つい大きな声が出そうになるのを手で抑えて、コッソリと後をつける。
その日も彼は格好良かった。
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