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その後男は何冊かの本を手に取ると、軽く俺に会釈をしてから去って行ってしまった。
どうやらずっと見入っていたのには気付いていたらしい。
恥ずかしい。
だがしかし、懲りずに通り際に持っていた本を盗み見る。
すると意外にも、それらはお菓子作りの本だった。
まあ確かに、そういうコーナーなのだから当たり前だろ、何て今になったらおもうけど、その時は全く気がつかなくて。
もしかしたらあの人もスイーツが好きなのかもしれないと、少しだけ親近感を持った。
イケメンだけど甘党。
自分があんな風になれるとは、全くと言っていい程思わない。
だが、何らかの参考にはなるのではないだろうか。
だって、あんなに完璧な人を今まで見たことがない。
自分の理想その物だ。
高校の中にもとてもモテる友人がいるが、その友人ですら霞んで見える。
そして千晶は思った。
あの人を観察すれば、少しは自分も格好良くなれるかもしれない、と。
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