1章:甘いものは程々に

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その後男は何冊かの本を手に取ると、軽く俺に会釈をしてから去って行ってしまった。 どうやらずっと見入っていたのには気付いていたらしい。 恥ずかしい。 だがしかし、懲りずに通り際に持っていた本を盗み見る。 すると意外にも、それらはお菓子作りの本だった。 まあ確かに、そういうコーナーなのだから当たり前だろ、何て今になったらおもうけど、その時は全く気がつかなくて。 もしかしたらあの人もスイーツが好きなのかもしれないと、少しだけ親近感を持った。 イケメンだけど甘党。 自分があんな風になれるとは、全くと言っていい程思わない。 だが、何らかの参考にはなるのではないだろうか。 だって、あんなに完璧な人を今まで見たことがない。 自分の理想その物だ。 高校の中にもとてもモテる友人がいるが、その友人ですら霞んで見える。 そして千晶は思った。 あの人を観察すれば、少しは自分も格好良くなれるかもしれない、と。
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