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よく分からない感情にあたふたしながら、何とかこの気持ちを鎮めようとしていた時、政宗が言った。
「んー、久しぶりに何か借りて行くのも悪くないか?…うん、それじゃ皆で入ろ~ぜっ!」
そう言うや否や、返事も聞かずに今にも駆け出して行きそうな政宗に、千晶は少しだけ焦る。
何かあの人を見せたくないし、これでバレたら、恥ずかしすぎるし!
何お前、そんな事してたの?全然成果出てないじゃん、なんてなったら軽く鬱だぞ。
いや、でも今日だけならバレる確率なんてほぼ0なわけで。
ただ図書館に来てたって事にして、一切あの人に近付かなければいい。
チラ見くらいはするかもだけど。
少なくとも政宗にはばれてないだろうし、毎週着いて来る…とかするかなあ…?
でもなあ…未だに暴こうとしてたとか、粘着質にも程があるってやつだしなあ…。
いやいや、今日あの人が来ているとも限らないし?
普通に考えて大丈夫そうだけども。
どうするかと思案しながら立ち止まっていると、
「…いや…、今日は…帰る…。千晶…また…明日…。」
と遙が言った。
「…えっ!?」
何故?と聞く前に何故か遙に頭をヨシヨシと撫でられた。
嫌だー!なんて怒っている政宗を華麗にスルーしながら、ズルズルと引っ張って歩いて行く。
二人はあっという間に見えなくなってしまった。
「…助かった…のか?」
思わずそんな事を呟いてしまった。
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