1章:甘いものは程々に

21/21

207人が本棚に入れています
本棚に追加
/79ページ
よく分からない感情にあたふたしながら、何とかこの気持ちを鎮めようとしていた時、政宗が言った。 「んー、久しぶりに何か借りて行くのも悪くないか?…うん、それじゃ皆で入ろ~ぜっ!」 そう言うや否や、返事も聞かずに今にも駆け出して行きそうな政宗に、千晶は少しだけ焦る。 何かあの人を見せたくないし、これでバレたら、恥ずかしすぎるし! 何お前、そんな事してたの?全然成果出てないじゃん、なんてなったら軽く鬱だぞ。 いや、でも今日だけならバレる確率なんてほぼ0なわけで。 ただ図書館に来てたって事にして、一切あの人に近付かなければいい。 チラ見くらいはするかもだけど。 少なくとも政宗にはばれてないだろうし、毎週着いて来る…とかするかなあ…? でもなあ…未だに暴こうとしてたとか、粘着質にも程があるってやつだしなあ…。 いやいや、今日あの人が来ているとも限らないし? 普通に考えて大丈夫そうだけども。 どうするかと思案しながら立ち止まっていると、 「…いや…、今日は…帰る…。千晶…また…明日…。」 と遙が言った。 「…えっ!?」 何故?と聞く前に何故か遙に頭をヨシヨシと撫でられた。 嫌だー!なんて怒っている政宗を華麗にスルーしながら、ズルズルと引っ張って歩いて行く。 二人はあっという間に見えなくなってしまった。 「…助かった…のか?」 思わずそんな事を呟いてしまった。
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

207人が本棚に入れています
本棚に追加