1章:甘いものは程々に

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まず第一に、店の外観が可愛すぎる。 なんだそんなことか、なんて思わないで欲しい。 そりゃあ、気にしない男性もいるとは思うけど、大半はあの可愛らしい外観のケーキ屋さんやスイーツカフェに一人で行きたいとは思わない。 そして二つ目。 此方は自分の都合で悪いんだけど、単純に女性が苦手だから。 母親譲りのぱっちりした大きな瞳。色素の薄いふわふわの猫っ毛。もう17歳になるというのに全く伸びない髭と身長。 最大のコンプレックスである。 こんな外見のおかげで、小さな頃から散々な目に合った。何があったかなんて思い出したくも無いけど、そのせいで未だに女性不信だったりする。 大体、ケーキ屋って女性多すぎでしょ!店員からはじまって、客も全てと言っていいほど女性ばかり。入りにくいって。 そう思いながら千晶は手に持っていた雑誌をバシバシと机に叩きつける。 するとふと、先日あったいや~な事を思い出してしまった。 学校帰り、中学からの友達、野々宮 遙と共に意を決して入ったスイーツカフェで、何故か自分ばかり試食のケーキを勧められ、何故か遙のケーキまで俺のお皿に盛られて来た。 意味が分からない上に、気恥ずかしさもあってそのまま遙と一緒にケーキを食べたが、帰り際の店員の声で全てを理解した。 後ろの方でこっそり聞こえた、 「お似合いのカップルね~。」 なんて言葉。 男の子の方、寡黙そう~、だとか、女の子可愛い、なんて聞こえてくる。 今思い出してもイラつく。 どっちも男だっての!! そりゃあ、遙は身長も高いし? 女にはどう転んでも見えない顔だけど。遙だって、一見そうは見えないけど甘党仲間なのに。 偏見かよ。ふざけんな。 男らしくをモットーに頑張って来たつもりの俺は、その後放心状態で帰宅した。 正直心が折れるかと思った。
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