1章:甘いものは程々に

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「あ~あ、何で俺は母さん似なんだろうなあ…。」 そんな事を呟きながらごろりと頭を動かし、左手に見える真っ青な空を目線だけで捉える。 右頬に机の硬く冷んやりとした感触を受けながら、自分が父さん似だったら、なんてことを考えた。 (女の子に間違えられるなんてこと、無いんだろうなぁ…。) 背がすらっと伸びて、目は凛々しくちょっとつり目で。細いけれど程よく筋肉のついた身体。 ぱっと考えて、それじゃあまるで弟みたいだ、なんて思った。 千晶には2歳年下の弟がいて、名を千里という。 彼は恨めしい事に父親似だった。 きっと今頃真面目に授業を受けていることだろう。 昔はよく一緒に遊んでいたが、最近は全くと言っていいほど遊んでくれない。 「受験生だもんなぁ…。」 まあ、それはどうでもいいけどさ。 それに、父さん似の弟がケーキ屋に入って行く所も想像出来ないし。もし自分がそうなっても、今まで通り入りづらいのに変わりはなさそうだ。 「結局どっちもどっちだけどさあ~。」 そう言うと千晶はため息をついた。 が、すぐ様目を輝かせ、ガバッと起き上がる。 「けど、人目を気にしなくてよくなるんだよな。」 そう。これからは男性用のスイーツカフェに行けばいい。男性でも堂々と入れるし、苦手な女性との接触も少ないだろう。 リスクが一つでも減るんだから、喜ばしい事だ。 大好きなスイーツをご褒美に、更に男らしくなる勉強をするのも悪くない。 それなら特に頑張れそうだし。 うんうんと頷き、千晶は顔を正面に向けた。
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