1章:甘いものは程々に

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数学の時間が終わり、早速バックレようと考えていた俺に、二ノ宮先生は泣く子も黙るような凶悪な顔で「来いよ?」とだけ言い残して帰って行った。 (くそ、何故分かった。 水曜日だけは嫌なのに。何でいつも放課後にするかなー。 昼休みにならないかな?駄目だろうなー。) 今度数学準備室のお菓子こっそり食ってやるー、なんて呟きながら不貞腐れていると 「おいおい、また二ノ宮に怒られるぞ。」 なんて声が聞こえた。 ぱっと身体を後ろに向けて、よく知ったその声に返事を返す。 「なんだよ、政宗。教えてくれてもいいじゃん。先生いるって。」 そこに立っていたのは、千晶の幼馴染の結城 政宗だった。 その後ろには、相変わらずぼーっとしている遙もいた。 政宗と遙が並ぶと、身長差が20センチ程開く。 その差を見て政宗が若干不憫に思えたが、残念ながらその政宗よりも更に10センチ程低い俺は、遙の隣は危険だ、と思った。 「いやいや、どうやっても無理だろ。席、滅茶苦茶離れてるっての。」 政宗は二ノ宮こえーし、なんて言いながら先程見た呆れ顔を浮かべている。 政宗とは小学校からの幼馴染で、所謂腐れ縁。中学からそこに遙が加わり、現在同じクラスである。 何で席離れてんだよー、なんて変な八つ当たりをしながら、千晶は机の上に無造作に置いてあった若干くたびれた雑誌を掴み、政宗に渡す。 「ちょ、俺の雑誌クッタクタ!」 今日買ったばかりだよ!? なんていう政宗の叫びを取りあえずスルーしながら、千晶は考えた。 今日こそはあの人に会えるだろうか。 会えたらいいなあ…、なんて。
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