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俺、絶賛待ち伏せ中。
瞳子さんが来るのを毎日校門で待っている。
朝練に一緒に行きたいから。
まだ人気のない通学路を、慌てて走ってくるのが可愛いのだ。
「佐川くん、ごめんね、待った!?」
「ううん。今来たとこだよ。」
周囲を確認する。
「今日は瞳子さん、一人……?」
「うん、お兄ちゃんも同じ電車に乗ったんだけど他校の女子に話しかけられてたから、その隙に」
今日はツイてる。
アイツがいないなら、もうちょっと瞳子さんに色々と教え込む……
いや、近づくチャンス。
手を握る。
それだけで赤くなるのが可愛い。
晴れて付き合って、一ヶ月が過ぎた。
と言っても二人で過ごせる時間は貴重だ。
「瞳子さん、すごい汗」
途端に手を離そうとするのを、ぐっと力を込める。
「ああ、手のひらじゃなくて……」
ハンカチで額の汗を拭いてあげる。
「佐川くん、自分で拭けるよ」
「ダメ。こっちの手離したくない」
ますます赤くなる。
額の次に首に下りていくと、くすぐったいのか身を竦めた。
「んっ」
うわ。
これ以上は止めとこう。
朝から良いものを見せてもらった。
引き際が肝心だ。
別に焦ることはない。
だって。
もうれっきとした俺の彼女なんだから
「おはようトーコ」
「ひゃっ」
「気配消して抱きつくんじゃねーよ、ド変態!!」
アスターに裏拳を入れた。
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