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ナナシ先輩
「あれ、こんにちは。お兄さん」
売店で出会った。
「お兄さんはやめてくださいって、梨田先輩」
「ふふ、なんか、クセになってねえ」
二人とも背丈が同じくらい。
パンの争奪戦が始まっていて、売場が見えない。
人の切れ間に滑り込んで二人とも難なく買っていた。
「えっと、あかり迷惑かけてませんか」
「べつに~。この前、マニキュア塗ってくれたよ。面白いよね、あの子。」
「マニキュア……!?あいつ何やって……」
「なんていうか、俺にとってはそういう絶対自分がやらない楽しみを教えてくれるのが救われててさ。あかりちゃんには感謝してる」
前ならあかりに近づく男は全部排除しようとしていたけど、梨田先輩にはそういう気持ちが起きない。
「その前は公園で話をしたし、手芸屋にも行ったな。辛いラーメンに挑戦したいって言うから付き合ったり、空手の試合を見に行きたいって言ってたから一緒にくる?」
「梨田先輩、本当にあかりのことをなんとも思ってないんですか」
「うーん」
「前なら即答してましたよね。」
「誰のことも自分のことも縛りたくないんだよね。だから考えないようにしてる。
君は、安曇さんが望んだら手を離せる?」
「無理です」
「はは、即答。
俺もそうなると困るから。都合のいい遊び相手って、あかりちゃんに思われてるなら、そのままがいいな。もちろん、変わらないとは言い切れないけど」
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