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「とうやま おみちか。
教えてやるから、ちゃんと覚えろ」
「おみちか?
珍しい名前ですね…」
「漢字は別に珍しくも無いけどな…」
むっ。ホント一言多い。
「だから思い込みってヤツですよ。
フジヤマさんがあんまり大きな人な
ので、富士山と巨人を連想しちゃっ
て…」
「と・う・や・ま。
じゃぁ、そう言うアンタはチ○まる
子か?」
「谷口 美奈子です。
ネームプレート、ちゃんと読んで下
さいね。フジヤマさん」
「何だ、本当にまる子か。
名前のまんまの見た目だな」
酷っっ…。
それを言ったらおしまいじゃない!
売り言葉に買い言葉?
でも、見た目にコンプレックスのある私をキレさせるには充分で、メラメラと闘志が湧き上がる。
「じゃ、フジヤマさんは紛らわしい
のでチカちゃんで」
「あ?
何で下…」
「可愛いらしくて良いですねっ」
バチバチと火花を散らす私達の横で、コホンと小さな咳払いが響く。
ハッと振り返れば、講師のお姉さんが満面の笑顔を浮かべて立ってた。
「さっそく仲良くなれたようで宜しい
のですが、他社へ出向いた時の練習
も兼ねてますので。
ニックネームは避けて名字で呼ん で下さいね?」
『スミマセン…』
講義中だって事、すっかり忘れてた。
口調は穏やかなんだけど、講師の先生が放つオーラは冷ややか。何となく周りからの好奇に満ちた視線も痛い。
初っ端から最悪だ。
チカちゃんを敵だと認識した瞬間だったと思う。
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