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「ま、まだ……ううん。な、内緒。ネタばれしたら面白くないでしょ」
私の質問に、舞之原は激しく動揺する。
――やっぱり、何も考えていなかったんだな。こいつ。
呆れ気味に鼻から息を吐きだす私は、もう一度、今度はしっかりとフェンスを掴みながら上半身を屋上の外へと送り出した。
少し生温かい風が吹き、深い眼下を眺める私の背が汗で濡れる。
今日は、もう無理かもしれない。
――しかたないなぁ。でも、まぁいいか。
舞之原も言ったじゃないか。
『死ぬのなんて明日でもできる』
急ぐことじゃない。
だって、私にはまだ一年もあるんだから。
そう思いながらも、私は心の奥底で安堵していた。
こうして私の自殺の一日目は、この謎の闖入者のおかげで未遂に終わったのだった。
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