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あたしを産んだ母親の名前は【秋山陽子】という。
父【川中衛】と、2年同棲をしていて、あたしが
産まれた。
何故、父と陽子さんが籍を入れなかったのかは、母にも分からないらしい。
陽子さんは、作家志望で、家事にはかなり無頓着だった。子育てにも興味はなく、父が働きに出ている間、執筆活動優先で、家のことは必要最低限しかしない。
あたしの中で、陽子さんの印象が薄いのは、そのことが原因だと思う。
母は父の働いていた、食品会社の同僚だった。比較的仲はよかったが、結婚するまでの仲になるとは、考えていなかった。
母は当時、27歳でバツイチだった。離婚の原因は、性格の不一致というよくある理由。
父は突然、当時3歳だったあたしを、母のアパートへと連れてきた。
陽子さんと父の関係は、あたしが産まれてから、次第に冷めていったという。
とにかく、家のことを何もしない陽子さんに、父は見切りをつけ、母のところへと入り浸った。
独身女性のアパートに、子連れの男がやってくるというシチュエーションは、ご近所にも印象はよろしくない。
それでも母は、父のことを、受け入れた。
そして、それ以上に、あたしのことを受け入れてくれた。
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