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母は突然の父の訃報に、ほとんど錯乱状態だった。
父方の両親は、あたしを最後まで母の娘として認識していた。けれど、母方の両親は、他人の子供を育てる義務はないと、猛反発。
母方の母……つまり、あたしの祖母は、母と言い合いになった。
「月子は衛さんの子……あたしは衛さんと
結婚した……だから、月子はあたしの子よ」
「小夜……あなた、騙されたのよ。子供が産めないあなたを、あの男は利用してただけじゃない」
「違う……衛さんはあたしを愛してくれた。あたしを、あの子の母親と認めてくれた」
「いい加減になさい! あの子を産んだ母親は、どこのだれなの? 教えなさい、小夜!」
「月子はあたしの子……だれにも渡さない……絶対にだれにも渡さない!」
「あなたひとりで、あの子を育てられるわけないでしょ。バカなこと考えないで」
「月子はあたしが育てる……だれの手も借りない」
「あなたが苦労することないでしょ! こんなバカな話ないわ」
「あたしには、もう月子しかいないのっ!」
「……」
「月子までいなくなったら……あたし、もう生きていけない……」
母の涙ながらの訴えに、祖母はそれ以上、何も言えなかった。
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