5人が本棚に入れています
本棚に追加
母は父の訃報を、陽子さんに報せるべきか、悩んだが、いずれ知られてしまうことだと割りきって、母は、あえて連絡をした。
告別式が終わったあと、親戚一堂が帰ってからのことである。
陽子さんは、当然あたしを引き取ると切り出した。父に育てられるぶんには、まだ納得がいくが、他人である母に、我が子を預けるなど言語道断だと、陽子さんは、まくし立てた。
「これじゃまるで、あなたの子供を作るために、川中に利用されたみたいじゃない」
「あなたに、そんなこと言う資格あるんですか?」
「……」
「本当の母親なら、どんなことをしてでも、我が子を手放したりしないはず」
「……」
「主人と結婚してから、あたしは会社を辞めて、月子を育ててきました……この2年間、ずっと家族として暮らしてきたんです」
「……」
「自分の都合で育児放棄したあなたに、月子は渡せません」
「あの時はどうかしてた。自分の小説がだれにも認めてもらえなくて、焦ってて、育児に時間を取られて、そのせいで作家作業に集中できなくなって……でも、いまは反省してる。とんでもないことをしてしまったと……」
最初のコメントを投稿しよう!