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あたしと母の姓は【麻生】。
父が亡くなるまでは【川中】という姓を、
名乗っていた。
父が亡くなったのは、あたしが5歳のころ。
酒に酔って、誤って川へ転落し、還らぬ人に。
以来、母は女手ひとつで、あたしを育ててくれた。
父の葬式には、陽子さんも来ていた。
その時は、あたしも、彼女は母の妹だと
聞かされていたので、そう思っていた。
5歳の頭では、その程度の認識しかない。
ずっと疑問には思っていた。
母と暮らす以前から、あたしは陽子さんと暮らしていた記憶がある。微かな記憶だが、決して消えることのない、陽子さんの面影。
その疑問を抱えたまま、母と暮らしてきた。
母が真実を話す、あの日まで。
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