第1章

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大きな街のビジネスホテル。 ほんの数センチだけ開く窓を開けて、 むせるほど酷い空気を部屋に取り入れる。 もうちょっと何とかならないのかしら。 この空気。 もっと上の階だったらきれいな空気なのかな… 贅沢は言ってられないけど。 ここに慣れなきゃ。 ひとに紛れて、 ひとりで生きてく。 毅が今までそうしてきたように。 パパが… 毅も復学するって教えてくれた。 だから、 私にも頑張れって。 頑張る? 何を? 毅を忘れることを? 忘れられる訳ない。 でも、 頑張ったんだよ…私。 大丈夫なフリをして、 頑張ったの。 でもね…? 見つけちゃったの。 毅の部屋に居たとき。 毅が大事そうに隠してた… 写真。 部屋を掃除してるときだった。 いつも毅が読んでる難しい本。 それを持ち上げたときにコトンと落ちた… 写真サイズに切ったクリアファイルに入ってた、 黄ばんでボロボロになった写真。 赤ちゃんを抱っこして、 口元がほころんでる女の人 ママだとすぐに判った。 口元だけでも、 私のママだから。
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