第1章

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親なんか要らない。 もう必要ない。 毅はいつもそう言ってた。 恨んでる。 そうも言ってた。 なのに、 本当は… 母親の口元だけを見つめて泣いてたんだね? 逢いたい…って 解っちゃったから。 毅の本当の心の中。 私の前ではあんな平気な顔してたけど、 こんなに逢いたかった母親に、 逢いたかった…って言えないで。 私がいたから。 私がその写真を見つけたことは気付かれないように… そっと、 元の本の間に隠して。 決心を固めたんだ。 私がここに居ちゃ、 毅は苦しいままだから。 「パパ、ママ。 お願いが有るの。 少しの間、旅行にいきたい。 ひとりで知らない土地で色々と考えたいの。 帰ってきたらちゃんと学校に行くから。」 嘘をついた。 帰るつもりなんてなかった。 ひとりで生きて、 すべてが自分の中で消化できて… 少しの自信が付くまでは。 あの日の毅の顔が頭から離れない 泣き顔を笑顔に変えようと必死で手を振ってた毅
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