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私が毎日、
用があるのは
そんな水族館の一番奥にある地下室だった。
幾つもの青い円柱を抜けて、
天井が全てクラゲの水槽になっていて、
怪しく何処までも引きづりこまれるほど長く青く暗い階段をくたばりそうになりながら歩くと、
例の地下室に着いた。
ドアもなければ窓もない。
代わりに周りの壁一面がどす黒くてきらびやかなクラゲの水槽になっている地下室。
狂ったみたいなクラゲの色だけが転々と辺りを照らす部屋。
「あら、御父様。
いらっしゃって下さったのですか?
苦揺(くゆれ)は、心より御父様のご帰宅をお待ちしておりました。」
光が反射して妖艶に光る
目と八本の蜘蛛のようなとがった足。
吸い込まれそうな程の黒と紫の瞳。
顔にひとつだけのそのにやけた目と三枚の舌。
這いずり回らせる口。
地面につく程の黒髪を華奢で折れ曲がりそうな上半身に這わせて、
怪我やあかぎれひとつない指を私に絡ませてくるそれ。
私の娘である。
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