雨のち深海、時々幻

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「苦揺、ソファー。」 「はい、御父様。」 「苦揺、タバコ。」 「はい、御父様。 ただ御父様? 肺を痛めてしまいますよ?」 「うっさい。 あと苦揺、ビール。」 「はいはい、御父様。」 私の日課は、苦揺とまったりする。 たかがと思われるそんなことだった。 私はたぶん上半身は美人の苦揺にソファーになってもらって、 上半身の柔いお腹や胸の辺りを枕にして、 八本の蜘蛛のような無機質で艶々した足で、 自分の二本の足をマッサージしてもらって、 買ってきたタバコを吸って、 ビールを飲んだりしているのだった。 あとは苦揺から出る変な気分になる匂いに浸ったりしていた。 「御父様? 毎日こんなので気持ちよいのですか? いっつもこのまま寝てしまわれるのですから… たまには苦揺にご本を読んだり、 この壁一面のクラゲの話とかして下さいませんか?」 「うっさい。」 「……はあ、御父様。 貴方もう45なんですよ? そんな子供みたいに」 「わあった、わかった!! なんだ? ガキでもわかるように相対性理論の話でもしてやろうか?」 「はーい、それならその理論の奴聞きますよー。」 頭が緩く緩く緩く緩くなる。 苦揺の匂いで頭が緩くなる。 私はそんな心地よくなる頭に全部を任せて、 私に抱きついているそれに意味がわからない話をずっとしていた。 笑ってたからか、 娘のひとつ目がなんだか綺麗で仕方がなかった。 話している間、 ずっとそれが気になって仕方がなかった。
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