116人が本棚に入れています
本棚に追加
「…ウェッ…」
先輩が口を押さえた。
こんなとこで吐かないでくれよ~。
「先輩、トイレに行きましょう~」
菜摘先輩の肩に手を回し、抱え上げてトイレに運ぶ。
「我慢してくださいよ」
途中何度も「オェッ…」と言っている。
女子トイレの前で放すと、菜摘先輩は千鳥足でトイレの中に消えて行った。
「オェッ…オェッ~」
リアルな声が聞こえる…。
俺はとりあえず耳を塞いだ。
何分か待った。
トイレは静かになったけれど、先輩が出てくる様子はない。
ん?
寝てるのか?
俺は心配になり、居酒屋の女性店員にトイレを覗く様に頼んだ。
「すみません~。トイレの中に入って来てもらえます?」
女子トイレの中から女性店員の声がする。
俺は恥ずかしながら女子トイレに入った…。
「ここで寝てらっしゃるんですよ~」
嘔吐物は店員さんが流してくれたのか綺麗になっている。
駿介はトイレの便器に顔を乗せ、ぐうぐう寝ている菜摘先輩の肩を叩いた。
「広田先輩、起きて下さい。ここはトイレですよ」
ぐうぐう寝ていて反応はゼロ。
俺は菜摘先輩をとりあえず抱えて肩を支えた。
「あれ~?駿介ちゃん~ろうしたの~?」
トイレから出て歩きながら菜摘先輩は呟いている。
千鳥足で全然前に進まない。
やっとざわつく座敷にたどり着いた。
菜摘先輩は席に戻るとバッタリ倒れて眠り出した。
おいおい、
まだ寝る時間じゃないんですけど。
俺は恥ずかしながら仕方なしにぐうぐう寝ている菜摘先輩の横で、一人酒を飲んでいた。
お開きになり、菜摘先輩を起こす。
相変わらす寝息は変わらない。
駿介は自分も酔っていたがまた菜摘先輩の肩に手を回して立たせた。
足がグニャグニャしている。
支えるのがやっとだった。
→
最初のコメントを投稿しよう!