第1章

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■ 姥捨山をぶっ飛ばせ! 京都みなみ会館で『ロンドン・ゾンビ紀行』(監督マティス・ハーネー/主演アラン・フォード)を鑑賞した。 時は現代。舞台はロンドンの下町。老人たちが孫たちと協力してゾンビ討伐に乗り出すコメディ。ゾンビ映画の傑作『シェーン オブ ザ デッド』へのリスペクトとオマージュに満ちた作品らしいが、いてまえ!的なノリ炸裂のゾンビ・コメディだ。 本作の面白さは、なによりも老人が銃を手にとり、ゾンビをバタバタと射殺する点にある。本来なら最も餌食になりやすい老人が決起して、ゾンビを成敗する体裁だ。 このように老人が大活躍する映画は多くあるが、アングロサクソン特有のバカ元気というか、『特攻野郎Aチーム』的なヤケクソ三昧の勢いでゾンビを蜂の巣にする痛快さは本作ならではのもの。 介護施設での不自由な生活への愁訴や認知症に苦しむといった老人像は微塵もない。元気溌剌、化け物と対決する姿勢は、目前に迫る死と死にもの狂いで格闘する老人たちの現実を、鑑賞者に呼び覚ます。 『楢山節考』に代表される棄老の暗い印象とは対極の爽やかさを充分味わえる映画だ。 姥捨山なんかぶっ飛ばせ! 本作からは老いた明るい声が聴こえてきそうである。
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