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スルッと私の頬を掠める彼の大きな手。
オデコが離れたと思ったら、鼻同士がくっ付いた。
「…凛」
名前を呼んでくれる、いつもの優しい声。
鼻の次は唇…。
触れる数ミリの距離で忍さんはこう囁いた。
「私は裏切りません、絶対に。
一生あなたのそばにいます。
…絶対に離さないから」
忍さんが言っているのは、きっと私達の過去の話。
忘れ去ろうと思っていた。
でも、人に裏切られた気持ちは簡単には忘れられない。
私もこの人も、きっと心の奥深くでその傷は残っていて、些細な不安でもあっという間に深い溝になるんだ。
「忍さん…」
彼の手を握り締めた。
大きくて優しい、私をいつも守って安らぎを与えてくれる大好きな手。
「私も裏切りませんよ?
ずっとそばにいます。
いたいんです。
会いたくて、会いたくて、限界になっちゃって、勢いで会いに来ちゃったくらい忍さんの事、大好きですから」
きっとだらしないくらいにフニャフニャの笑顔で私、好きな人相手に惚気ているんだと思う。
その証拠に忍さんはいつもの変わらない表情。
そして、いつもの咳払いを一つ。
「…また、先を越されました…」
「何のですか??」
少し離れた顔の距離。
あれ?キスはお預け?
「あぁ、そういえば凛がまだ言っていない言葉、ありましたね」
「はい?」
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