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一食分ずつ分けてさっき買ってきたタッパーの蓋を、パコッパコッと閉めていく。
その間も忍さんはカウンターにもたれてこっちを見ている。
すっっっごく作業がしにくい…
「し、忍さん…何ですか?」
そんなに見られちゃ、照れます…
「いえ、今度は何を考えているのかと思いまして」
…あなたとの結婚なんて言えません…
「し、忍さんはあと食事で何が好きだったかなぁって考えてました…」
「それはそれで嬉しいですけどね」
…もしや見抜かれてますか?
私の単純な思考回路だったら、しょうがないかもしれないけれど。
全ての蓋を閉め終えて、何も入っていない冷凍庫に入れようとしたら…
「凛、こっちにおいで」
忍さんからカウンターにあるスツールに座るように手招きされた。
手を止めて、忍さんのもとにペタペタと足音を鳴らして小走りで向かう。
「ふっ…今度、スリッパを買いに行きましょうか?」
「へっ?」
「何でもないです。座って?」
スツールに座って忍さんの顔を見上げた。
何が始まるの?
スツールは回転式だったらしく、クルッと回されると、首元にヒンヤリとした感触がした。
「ひゃっ!!
えっ?えっ?!」
「本当は次に会った時に渡そうと思ったんですけどね」
彼が喋り終わると同時にチャリっとチェーンの音がした。
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