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忍さんが何を言っているのかわからず、ただ背の高い彼を首を上に向けて見つめていた。
すると彼は仕方ないな…という顔をして、
「ここのサイズですよ。」
と、私の左手薬指を私の顔の前に見せてきた。
一瞬何を言っているのかわからなかったけれど、徐々に理解してきた私の頭。
「あっ…あの…えっ…えと…」
口を魚みたいにパクパクさせて、だけど顔はトマトみたいにきっと真っ赤。
忍さんも薄っすらと赤くなっているように見える。
これって…
「けっこ…んぐっ!」
「結婚してくれるんですか?」
って聞こうとしたら、口を片手で封じ込められた。
なかなか酷いです。忍さん…
「その言葉だけは絶対に言わせませんからね」
久しぶり…凄く、すごーく久しぶりに見た無表情の顔。
怒ってます?
「全く…油断も隙もありませんね」
口を封じていた手は、私の頬をなぞる。
「私から言う日まで、ちゃんと良い子で待っていなさい。」
頬をなぞる指先が私の唇をなぞる…
「返事は?」
「………はい」
「はい、よく出来ました」
頭を撫で撫ですると、忍さんは凄く満足そうな顔をして、もう一つのスツールに座った。
忍さんが座ると私と同じ目線になる。
間近で見ると改めてかっこいいなぁ…と見惚れていたら、彼はカウンターにあった葉書を手に取った。
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