Pure

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布団のそばにあるデジタル時計で時間を確認した。 「そろそろ用意して向かいましょうか? 仕事に間に合わないでしょう?」 忍さんが起き上がって、着替えの準備を始めた。 そう、本当は昨日の内に帰っていたはずの私。 だけど、忍さんが引き止めてくれたからもう一泊する事になったんだけど、今日は仕事がある日だ。 シフトはお昼からの遅番だから時間はあるけれど、朝方の新幹線に乗らなきゃ絶対間に合わない。 はぁ…帰らなきゃ… 渋々、帰る用意をする。 といっても大したものは持ってきてないから、着替えやコスメ類を直すぐらいだけど。 あー、嫌だな… 帰りたくない。 ずっとここにいたいけど、まだ来ちゃダメだって言われてるし… 来週までお預けかぁ… 長いなぁ… 「凛、これ、渡しておきますね」 「えっ?」 タンスの引き出しから、鍵を一つ取り出した忍さん。 それを私の手のひらに落とした。 「これは?」 「この家の鍵です」 「えっ!えっ!」 鍵と忍さんを交互に見る。 どういう事?! 「わ、私、来ちゃダメなんじゃ…」 「もう、ここは凛の家だよ」 「へっ…」 「凛さえ嫌じゃなければ、いつでも来て下さい」 鍵をギュッと握る。 「…来てもいいんですか?」 「会えない方が辛いという事、今回の事で実感しましたから」
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