Pure

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会えない方が辛い… 私も昨日、凄く痛感した事だ。 近いのに会えない。 会える距離なのに、会いに行けない。 それが遠い距離になれば、もっと会いにくくなる。 だったら過去に囚われず、私が会いたくなったら会いに来てもいい。 忍さんは、そう言ってくれてるんだ。 「ありがとう…ございます…」 溢れてくる涙を拭きもせず、忍さんに抱き付いた。 あと少しでお別れ。 例えほんのちょっとでもいい。 彼の香りと体温を私が住んでいる家に持って帰りたい。 「もう少しだけ… もう少しだけ、待って下さいね」 忍さんが私を苦しいくらいの力で抱きしめた。 彼も寂しいと感じてくれているのかな? 「必ず迎えに行きますから。 あなたを」 「…はい、待ってます。 私、信じて待ってますね」 それが、いつ…だなんて約束は出来ない。 だって彼は不器用なくらい真面目な人だから。 それがわかってるから大丈夫。 それに… 「忍さんから貰ったネックレスがあるから寂しくありません。 いつでも一緒だと思えるから」 彼に安心してもらいたくて、私なりに最高の笑顔で語りかけた。 少し泣き顔だけど… 忍さんは涙の後を指でなぞると、優しくキスをしてくれた。 それからも、迫ってくる時間まで…離れ離れになるその時まで、私達はずっと一緒にいた。 少しでも離れてる時間が惜しくて… 手を繋いで、ずっと彼はそばにいてくれた………
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