一.蓙織園産幸福茶

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「今時のわかもんはのー、茶を飲まないと聞いてのー、これはけしからぬと、あたしゃ立ち上がったのじゃよ。んで見てみたら、こりゃあ驚いた!みんなお茶飲んでるじゃないか!しかしどうだ?綾方とか黄右衛門茶とかや~いお茶とか…全部ペットボトルに入ってるお茶じゃないか!!普通にお茶飲んでるじゃないかって?うんにゃ、甘い甘ぁぁぁぁい!!お茶はのー、飲んで楽しむのではない!香りを愉しみ、急須で注ぐ音を愉しむのじゃ!!「楽しむ」を「愉しむ」にしたのも、あなた……ぬし………ん、お前さんはなぜだと思う!?それは小さな違いではない!根本的に違うのじゃ!そう、あたしゃね、わかもんにもお茶を心から愉しんでほしくて夜も眠れんで、まくらをぐっしょり濡らす夜も……というわけであなたに……こほん!お前さんに……って、あれ?」 老婆(?)が気づいた時にはもう、僕はその場から去っていた。 本人はあやしい者ではないと主張していたが、見知らぬ人にいきなり熱弁し出すなんてどう見たって、どう考えたってあやしい。 あやしい宗教へ誘(いざな)うタチの悪い宣教師と判断し、熱弁している隙に去ったのだ。
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