一.蓙織園産幸福茶

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 自宅はもちろん狭い。特に友人らと集まってお酒を飲んだりするわけでもない。だから、一人なら狭いくらいが丁度いいのだ。 玄関から入ってすぐ右手側にあるキッチンを通り過ぎ、スライド式のガラスの扉を開けて居間に入ってカバンを投げ捨てるように置いた。そうして嘆息を漏らす。 敷きっぱなしの布団を見て眠気……いや、倦怠感がこみ上がってきた。 布団に寝転がってリモコンでテレビを付けて、ぼんやりと画面を見つめる。辺りの薄暗さなんか気にならなかった。 「にぃ」 寝かけていた僕の横っ腹に何かが乗った。 ーーああ、またか。 それは、一昨日くらいから部屋に侵入するようになった、茶猫だ。 その猫が非常に奇妙で、どこからどうやって僕の部屋に侵入したのかわからないままなのだ。 「……」 踏み台にしていた僕の身体が動き出すと、猫は降りた。座ったままじっと猫を睨みつける。すると、猫も僕の瞳をじっと見上げた。 「お前、またノミ拾ってきたんじゃないだろうな!」 僕が猫に問いかけると、まるで言葉を理解したように目を丸めて後ずさりした。
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