序.

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 「……仔猫さん、病気なの?」  ーーそれは、僕が9歳の頃だった。  学校行事で隣市の水端公園へ遠足に行った帰り道。 木枯らしが吹いたあの時。 両親は仕事で迎えには来れなかった。一人だった。 町外れの畑道を歩いている時に、僕は道の端に倒れている小さな猫を見つけたんだ。 苦しそうな息遣いをする仔猫の周りには何匹ものハエがたかっていて、見るのもつらかったのを覚えている。 周りには誰もいないし、僕は、水筒に入った温いお茶をあげるくらいしかできなかった。 コップも兼ねているフタを開けてお茶を注ぎ、仔猫に飲ませた。 そうしたら、その仔猫は息を引き取ってしまったんだ。 その後、僕は仔猫を畑の隅に埋めてあげたーー
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