一.蓙織園産幸福茶

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*  木曜日の講義は4時限と5時限だけで、家につくのはだいたい18時頃。 大学に近いオンボロアパートといえど、距離は歩いて20分ほどある。 オンボロアパートらしく裏道を通り続けてたどり着く目立たない場所にある。僕らしい……のだろうか。 「椿は相変わらず暗ぁい顔してやがんな!」 正門前の階段を降りて大学から出ようとした時、背後から高校の同級生だった人志(ひとし)が茶化すように言ってきた。 こいつとは特別仲が良かったわけではない。この大学で唯一同じ高校出身というだけで、すれ違っただけで一々話しかけてくるのだ。 それも、毎回バカにしたような事しか言ってこない。不愉快だ。 「……ほっとけよ」 「え?なんか言った?」 「いや、なんでも」 人志は自宅から大学に通っている。駅とは反対側の方向にアパートがある僕とは、正門で別れる。
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