血濡れのてるてる坊主

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雨の日はいつも嫌いだ。濡れるからとか、傘をささなければいけないとか、そういうわけじゃなくて嫌いだった。彼女を奪っていったから、 その降りしきる雨粒の一つ一つがまるで、血のようで僕は苦手なのだ。血の涙と表現するべきだろうか、空を大きな雲が覆い尽くし、雨粒を降らす。その雨粒が僕の心の傷をえぐるから、だから、人を殺したくなる。 「うぁう………ぅうぐぅう!!?」 女の呻き声が夜中の路地裏に響く、苦悶に満ちた表情からは生への渇望から大きく目が見開かれ、口からよだれが垂れていた。食い込む縄を振り解こうと何度も首に爪を立てるけれど、悪戯に首を傷つけるだけでなんの意味もない。呼吸ができない苦しさが彼女からどんどん命を奪っていく。 僕はその声を聞きながらなおも縄を首に巻き付けて締め付けていく。殺すつもりなんてなかった。彼女に恨みがあるわけじゃない、ただ、今日が雨が降っていたから、彼女を殺す必要があったのだ。 雨を早く止むようお願いするには、てるてる坊主を作らなければいけない。それも人間くらいの大きなてるてる坊主だ。 僕は殺しに美学を感じているわけじゃない。人を殺すなんて何度やっても慣れないし、苦しい行為だけれど、てるてる坊主を吊さなければいけないのだから仕方のないことだ。雨は嫌いだから、大好きだった人を、雨の日にはてるてる坊主を作って無邪気にお祈りしていた彼女を奪った雨の日が、だから、殺すしかない雨の日が一日でもなくなるように殺すしかない。 死んだ彼女の顔に真っ白な布を被せ、その顔面にへのへのもへじをマジックペンで書いていく。相変わらずの出来栄えに僕は思わずため息をついた。下手くそだなぁと思う。彼女だったらきっともっとうまく書けただろうにと鑑賞に浸っている場合じゃない。僕はいち早く雨が止むようにてるてる坊主をもっとも高い建物から吊す。ミシミシとてるてる坊主の首のあたりから締め付ける音がしてブラブラと揺れた。 相変わらず雨はやまない。僕は手を合わせ、天を仰いだ。降りしきる雨粒の一つ一つは血の涙、覆い尽くす雨雲は心の闇。手を合わせ、祈り、歌う。 「てるてる坊主ー、てる坊主ー、明日、天気にしておくれー、いーつかの夢空ののように、晴れーたら金の鈴をあげよう」 そうしなければ、殺してしまう。彼女との思い出と共に、 「てるてる坊主ー、てる坊主ー、明日、天気にしておくれー、僕の願い聞いたのなら」
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