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「ふう…寒いな…」
──秋を少し過ぎた冷たい風が吹く、薄暗いストリート。
そこを厚着のコートを来て歩く俺の足元には、動物の耳が付いた者達が寝転がっていた。
彼らは、人間だが、人間ではない存在だ。
今、全ての発端は彼らをこんな風にしてしまったヤツにある。
その事を説明するには、少しの時を遡ることになるが、聞いてくれ。
七年前、この国の一番上のお偉い様が別の奴に変わった。
この国は、ひとつ前のお偉い様が国のためにとても尽くしてくれた人だったので、今までにないくらい平和で、皆が上に感謝していた。
とても安定した、大きな争いのない良い国だった。
ところがある日、そのひとつ前のお偉い様が持病の心臓病で倒れ、お亡くなりになった。
その出来事があり、空席になったその座に新しいヤツが座ったのだが…そのお偉い様が、今の、上下社会の大好きな最低な奴だったのだ。
国はお偉い様の命令で、一部の肉親の居ない若者達を引っ捕らえた。
肉親の居ない…つまり助けなど来ないような者達を、だ。
そしてある特殊な薬を体へ入れ、そのもの達を売り払った。
それが、総称『ドッグ』だ。
元は人間だったもの達は、首につけた機械で声が出ないようにされ、獣の耳と尻尾が生え、『ペット』として金持ちに売られた。
勿論、ドッグにされたものたちは最初抵抗しようとした。
なんの意味もなく捕まえられ、意味のわからない薬を投与され、起きたら自分を飼う主人が居る。
普通に生活していればそんなことはあり得ないことで、ドッグにされたものたちは、国に訴えようとした。
しかし…ドッグにされたもの達は、逆らえなかった。
いくらこの生活が嫌でも、この生活を逃げ出したとして、その先には何もなかったからだ。
主人に歯向かったドッグは、大体がこの汚いストリートに捨てられる。
ドッグには一部を除いて働く事を許されず、寒さが一年中厳しいストリートでただただ寒さに震え新しい飼い主を待つしかなかった。
今飼われている者達と、ここにいる逃げ出してきた者達には決定的な違いがある。
それが何かと言えば、飼われている者達には家がある。
食べ物、安心して寝られる場所。だから、飼われるのも悪くはないと考えているやつもいる。飼われていると言うことは、自分はなにもしなくてもいいということだ。ただ主人のご機嫌取りをして静かに暮らせば、楽な毎日があるのだ。
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