ドッグ・ストリート

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でも、ストリートには何もない。身を隠す場所も、暖かいものも、食べるものも、何もない。 それでも、主人が飽きれば結局捨てられる。 そうじゃなくても主人が相当な変態ならば、それ以上を要求される。 だから、飼われることにうんざりした奴がここへ来ることもしょっちゅうだ。 「っ…は…っ」 「ほら、もっとケツを高くあげろ!!」 それに…ここでは、金の無い奴がそれでも気持ちいい気分に浸るために、少ない金をドッグに与え、暴力的な、性行為とも言えない事をする。 ドッグはその少ない金さえ、その日の小さな腹の足しになるため喜んで食いつく。だから、ここは「するために来る」のが普通なのだ。 それが、今俺が立つ道に寝転がっている人間だった者達の話だ。 …今の話だと、俺が"しに来た"と思われそうだが、別にそう言うわけでもない。 わけがあって…まぁ、色々あるのだ。 そういうわけで、今のこの国を平和だったあの時と比べると相当酷いものだ。 しかし、誰も何も言わない。 逆らえば何をされるかわからないし、皆自分さえ無事ならば良かった。 結局、他人が他人に救いを求めるのは無駄な行為だ。 それに、ドッグが逆らったところで、上は聞くわけがない。 それが、国の現状だ。 俺もドッグではないが下の方にいる。 が、これは好んで下にいる。 上の人間のように傲慢な人間になるのはごめんだからな。 案外金は持っているし、不自由はしてない。 そして今。 俺が何故このストリートにいるかというと、まあ一種の仕事だ。 ここら辺で商売するととてもよく売れる。 とても小さな食材を、高額で買うものが居るからな。 法律なんて、もう今じゃ滅茶苦茶だ。 善悪はもはや関係ないのだ。 生きていくためには。
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