ドッグ・ストリート

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そんなこんなでしばらく時間が経ち、やることを終えて早く帰ろうとした、そんな時。 …ボロボロの服を着た、少しガタイのいい、青色の鋭い目を持った野郎がこっちを見ていることに気付いた。 (…俺はこんなやつ知ってたか?) ふと考えを巡らせる。 そして直ぐに首を振った。 いや、この年の知り合いは一人も居ない。 睨まれたので考えてしまったが、きっとこいつも金がないんだろう。 こんな季節だと言うのに服は薄着で、少し身体が震えていた。 「…口で出来るか?出来るなら一万やる」 見つめて暫くの間が空いて、俺はそいつに聞いていた。 興味がなかった、というのは嘘ではないが、一応ドッグには仕事以外で関わったことはなかった。 しかしこう見つめられてしまうと、まあ一万くらいなら、と思い声をかけてしまう。 所詮偽善だが、ちょっとカワイソウと思ったわけだ。 そして、相手の驚いたような顔。多分、一万なんて貰えると思ってなかったんだろう。 耳と尻尾もピクリと動いた。 最近じゃあ札さえも貰えないこともあるらしい、という話を思い出す。 鋭い目付きの青年はコクリと頷き、なんの躊躇いもなく立っている俺のズボンに手をかけ、カチャカチャとベルトをはずした。 ひんやりとした空気に触れると、少し震えた。 青年がソレをくわえるまえに、肩に手を置いて制止する。 何、と聞くような目で見上げる彼に、俺は。 「名は?」 と聞いた。 聞いても仕方がないのだが…何となく。 すると、案の定またも驚いた表情。 ドッグに名を聞くなんて事は犬に名前を聞くようなことだ…気にするヤツは俺ぐらいなんだろう。 それでも、俺は別に動物として見てるわけじゃない。 相手がキョトンとした顔で見ているので、手を差し出すと、その手のひらに指で名を書いた。 「…ラル?」 俺が聞くとコクリと頷く、ラルという青年。 名を答えた後、肩に手を置いたままだからか、くわえていいのか戸惑っているような視線を送ってきた。手を戻しどうぞ、と少し笑うとその瞬間、冷たい空気に晒されていたモノがヌルリとした暖かい舌によって包み込まれる。 同時に、根本には冷たい手が添えられ、彼の耳が下へと垂れ下がった。 俺は身震いすると、ラルが舐めている姿をじっと見つめた。
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