1472人が本棚に入れています
本棚に追加
/276ページ
旦那様に呼ばれて勇気の出た私は、旦那様に倣って土足で屋敷内に入ります。
血痕は、玄関ホールからリビング前の廊下まで、引き摺ったような赤い帯を作っていました。
私はその赤い帯を辿るように進んでいきましたが、途中で再び足が竦んでしまいます。
廊下には奥様と家政婦が並んで寝かされていたのです。
近付くまでもなく、二人が既に息絶えているのは明らかでした。
二人の周りには血溜まりが広がり、私の靴がその血溜まりの上にあることに気が付くと、私の膝は再びがくがくと勝手に震え出すのです。
料理人が血溜まりに驚いてどうすると言われますか?
ですが、食物と人間は全く別物ですよ。
勝手な言い分でしょうが、食の為に殺生をする人間も、同種の人の血となれば一滴でも恐怖を覚えます。
それは自分に流れる血でもあるからです。
人が人の血を怖れるのは、死への恐怖に他なりませんからね。
最初のコメントを投稿しよう!