始まりの日

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父は誰かと話しをしている。その間特にやることがない自分は、入り口付近に用意してあったソファーへとへたりこんだ。 シャツが汗でベタつき、気持ち悪い。とめどなく流れ出る汗が目に染みる。 息が荒い。肩で息をしている状態。 クーラーはあるようだが、効いていない。人がすし詰め状態だからだろう、蒸し暑い。 「済まない、千影(ちかげ)。また走ってくれ」 そう言った時の父の顔は、どんな表情だったか。 今となっては分からない。 果たして自分は何と答えたのだろうか。確か、「また~?」とか、「え~!?」とか、そういう緊張感に欠けるだらけた答えだったと思う。 その時の自分は幼く、父が何も話してくれなかった反感からのものだ。 「済まない。もう少しだから」 『避難所』を出て、今度は父の背に負ぶさりながらの移動となった。 改めて見てみると、外は自分達と同じ方向に歩く、あるいは走る人が大勢いた。 「邪魔だ!!」 「どけろ!!殺されてぇのか!?」
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