始まりの日

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邪魔だと言わんばかりに蹴り飛ばされる自分。アスファルトに触れなかったのは奇跡だったと思う。 何とか人混みを抜けて、建物の間へと逃げ込む。ちょうどその時に吐き気が限界を迎え、吐き出す。 胃がキリキリと痛み、食道が焼けるように熱を持つ。 涙も溢れていたはずだ。 建物の影に入っているにも関わらず、熱気は変わっていない。空調管理されて快適なはずの電脳世界では、明らかに異常なことだ。 そもそもこの熱気自体がおかしい。気候は日本の春に設定されているはずだから、40℃超えそのものが狂っている。 何度も繰り返すが、当時の自分は幼く、何が起きているのか理解できていない。 苦しい。 暑い。 暑い。 暑い。 服が水を浴びたかのように重くなり、汗の臭いがきつくなっている。 道路にはもう割り込む隙間さえなくなっており、自分の目線で捉えられるのは、一定方向に流れていく足だけ。 みんなどこへ向かっているのだろうか。
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