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自分も釣られて顔を上げた。
太陽を覆ったのは、怪物としか形容できない物体だった。
鳥とヒトの女性とが融合したかのような姿。それが大量に空に漂っていたのだ。
こちらを見下ろすその姿は、不気味を通り越して神々しささえ感じた。
この時の自分の行動は、その場からの逃走。ほとんど無意識だったが、結果的にはこれで良かったのだ。
小さな体で大人達の間を駆け抜けた。子どももいたのだが、その多くは放心状態だった。
「千影!!」
気がついた時には、父に追いついていた。
おとうさん!!と、泣きながら抱きついたのを覚えている。
いろいろなことが起こり過ぎて、泣くことしかできなかったのだ。
「もう大丈夫だ!!」
強く強く抱き締めてくれた。父の体温は、とても温かく、頼もしかった。
三度(みたび)、振動。
この振動の原因は、すぐさま氷解する。
山のような大きさの、怪物。
ゾウのような長い鼻を持った、二足歩行の生物。
先ほどの怪物もそうだが、まるで物語から抜け出してきたかのような外見だ。
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