始まりの日

7/10
前へ
/10ページ
次へ
意味が分からなくなっていた。 泣くしかなかった。 すがりつくように父の胸に頭を押しつける。 グラリ……と、父が傾いた。あんなに頼もしかった父が、倒れ込む。父の首が、消えていた。 灼熱のアスファルトに落下。父はのたうち回ることもなく、肉の焼ける異臭が辺りを満たす。 「おと……さ……?」 思い出したかのように、血液が吹き出した。 アスファルトが真っ赤に染まる。 喉が張り裂けんばかりの悲鳴を上げ、自分はまたしても嘔吐した。 腹にはもう何も残ってはいないのだが、嗚咽が止まらない。 胃が捻り上げられるような感覚。 顔を上げる。 そこには、骸骨にカビを生やしたかのような外見の怪物が佇んでいた。 サーベルを持っており。もう片腕には、父の首。 さらに周囲を見渡せば、何人もの人間の首と胴体が落ちていた。 骸骨の怪物は1体だけだったと記憶している。 みんなこいつに殺られたんだ。 骸骨の怪物は自分を見て、ゆっくりとサーベルを持ち上げた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加