始まりの日

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「ち……ちょっと!?あんた何してんの」 少女は驚いたように駆け寄ると、自分を抱き抱えてアスファルトから引き剥がす。 自分は必死になって抵抗したが、結局は少女に抱えられたままだった。 「落ち着いた?」 気力を失った自分はおとなしくなると、少女はそっと下ろしてくれた。 先ほどとは違い、とても穏やかな声だった。 「ごめんね、私がもう少し速く来ていれば」 柔らかく、頭を撫でてくれた。その時の温かさは、時を経た今でも覚えている。 「ここは危ないから逃げた方がいいよ、といってもその足じゃ無理か……」 自分の膝は立っているのが不思議な程ぐちゃぐちゃに火傷していた。 痛みは通り越している。 少女は空間ウィンドウを展開。通信を始めた。 ディスプレイに映し出されたのは初老の男性だった。 「どうした?」 「生存者1名、子どもです。家族は不明、父親は死亡しました。指示をお願いします」 男性は少しも迷うことなく即答する。
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