第1章

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***** 年が明けると寒さも一段と増して、雪が舞うひも増えていた。 「さっぶー!凍るなぁ」 学校からの帰り道。 マフラーで口まで覆い直し、片手をコートのポケットに入れる柴田君。 愛車の自転車にまたがり、地面を蹴りながら私と歩くスピードを合わせてくれる。 ──悠花さんが旅立った次の日。 柴田君は髪を短くし、伊達めがねを外して登校し、みんなを驚かせた。 「失恋でもした?」 という、采女のド直球に、真っ赤になって否定していた柴田君を思い出す。 あとでこっそり、 「羽村やセンセー見てて、俺もこのままじゃいけないな、って思ってさ」 と、照れくさそうに頬をかきながら話してくれた。 事実、柴田君は学校でも本来の良さを見せるようになって。 弾けるような笑顔をたくさん見せるようになった。 それに比例するように、モテてるみたいで。 この頃から女子の間で 『髪モジャ・ネクラメガネ』 だった柴田君が、 『ピアノが超うまいイケメン』 に昇格してて少し笑えた。 いつだったか、ピアノが弾ける理由を聞いたとき 「あー、親父に仕込まれた」 「お父さん?」 あまり家族のことをしゃべらない柴田君から出てきたその単語に、聞き返す。 「あれ、言わなかったっけ。 ピアニストなんだよ。 柴田 智則って知ってる?」 「うっそ!」
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