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「幻の秋野愛、ついに正体判明したんて?」
「朝練ついでに見に来たで」
「愛ちゃんに会えるんか!?」
柔道部の強面達だ。
林がひきつってる。
「説明は広樹がするけぇ」
隆が俺を見る。
俺は――。
「……周陽町在住の高校生。そこまでは突き止めた」
「美人!? どこの高校!?」
そこのチャラ男が愛ちゃんじゃ、とか言ったら、暴動が起きるな。
「その辺が限界っちゃ。
ま、『都市伝説』の現実が見えちゃ興醒めじゃろ?
伝説は伝説のままのほうが、夢があらぁや、のぅ林」
「え!? あ、おぅ」
涙目の林。
ち、アホ。憎めない小心者め。
ちなみに、伝説のままでも、展示は充分好評だった。
「で林、何で『秋野愛』?」
後片付けしながら、隆が尋ねた。
俺も知りたい、それ!
「死んだ婆ちゃんの名前」
「……名前、可愛すぎるで婆ちゃん……」
「婆ちゃんが面白おかしゅう脚色した昔話、
忘れんうちに小学生の妹にも話してやりとうて。
あんな沢山の人が読んでくれるとか、思いもせんかった」
婆ちゃんの昔話か。
核家族の一人っ子で、両親と学校とパソコンしか知らない俺には、未知の領域だよ。
隆が意味深な顔で言う。
「今回の顛末、エブリに投稿したらウケるで、絶対!
書けぇや広樹」
林が慌てて遮る。
「ウケる前にソッコー強非、ペナン島行きじゃろ、それ!」
「ち、気づいたか」
「お前、悪魔か!」
「まあ『伝説は伝説のままのほうが夢がある』しのぅ、広樹」
隆がニヤリと笑った。
「黙れ悪魔!
それより林、非公開解いて、早う続き書けぇや。
ワシ、読みたい」
「おう!!」
林は、本当に嬉しそうに笑った。
『都市伝説』の新作、気軽にスマホ直接打ちでもして、
エブリに投稿してみるか。
秋野愛と、同じ土俵で勝負するのも悪くない。
隆のしたり顔が想像できて、ちょっと癪だが。
じき梅雨も明けるし、夏休みは目前。
ああ、今年は暑くなりそうだ!
Fin.
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