☆ 聖人君子の噂 ☆

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暖簾をくぐり抜け、案内された席に向かうと、そこにはお馴染みの面々がほろ酔い加減で盛り上がっていた。 「でね、さっき確認して来たんだけど…」 「うわー、マジかよ」 「それでそれで?」 話の中心人物は、山瀬さん。 「お疲れー」 盛り上がっている所を悪いけど、空いた席に二人で腰を下ろしながら声をかける。 「あーーっ! やっと来たんだ、営業部の二人組。 ちょっとちょっと聞いてよ。ビッグニュースよ!」 「落ち着け、山瀬。 俺らは来たばかりなんだ。 先に一杯ぐらい飲ませろよ」 今にも喋り出しそうな勢いの彼女を制し、運ばれて来たビールに口を付けている。 「で? ニュースが何だって?」 ジョッキの中身を半分ぐらい流し込んだ後、横でウズウズとしていた彼女に溜め息交じりの問いかけ。 山瀬さんは社内一の情報通だ。 同期会の度に、ビッグニュースとやらのゴシップを披露してくれる。 彼はあまり興味がないようだが、それもそのはず。 いつも自分の話題が上がるから、いい加減うんざりといった所なんだろう。 無駄に顔が良いと、平凡な顔立ちの人に比べて良くも悪くも「噂」が付きまとうものだから。
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