☆ 聖人君子の噂 ☆

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「いつまで突っ立ってるつもりだ。早く仕事に取り掛かれ」 「……申し訳ありませんでした」 やっと終わった。 悪夢のような長い長い小言が。 聞き流していたとしても、一度始まると30分は離してくれない。 皆の前で罵倒され続け、屈辱に打ち震える身体を回れ右して自分のデスクへ。 四方からは、同情と憐れみがこもった視線が突き刺さる。 テンションだだ下がり。 仕事する気力が全部部長に吸い取られたようだ。 大きく深呼吸。 秋山課長が上司だったらと、そんな夢はもう見ない。 営業に居る限り、私の上司は間違いなくこの薄らハゲなのだから。 仕事が出来ない自分。 上司にいびられる日々。 社内に飛び交う「噂」にだけ、気持ちを癒される毎日。 26歳なのに、ワイドショーや昼ドラにかじりつくオバサマと、なんら変わりない。 それが、今の私の現実だった。 向かいの席を眺める。 整理整頓されたデスクと閉じられたPC。 忙しい東條を恨めしく思う。 同じ配属先になって、喜んだのは最初だけ。 すぐに自分のスキルの低さという壁にぶつかり、恋だのなんだのと騒ぐ余裕がなくなったから。
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