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聞けば、その二人は今、同じ店に来ているらしい。
ついさっき、バッタリ鉢合わせて発覚した事実に、山瀬さんの口はとどまることを知らず滑らかに動いていた。
「川崎さんから寝かせてくれない彼氏が居るとは聞いていたんだけど…
その鬼畜な彼氏がまさか秋山課長だったとはね」
衝撃だ。
今まで恋バナの一つもなかった秋山課長が、部下と恋愛していただなんて。
決してブサイクだとか、嫌な上司だとか言うわけではない。
むしろその逆で、聖人君子を絵に描いたような人物。
その彼が彼女の前では別人のように、身体を貪る野獣って言うのが信じられなかった。
優しそうな顔をして、草食系かと思いきやまさかの肉食系。
人は見かけによらないってやつかも。
「それって、確かか?」
「なによー、ヒデ君。
疑ってるの? マジでマジだから」
おや? 珍しい……
こんな恋愛話しに食い付くなんて。
「どこに居んの?」
「その角を曲がった突き当たりの座敷だよ」
無言で立ち上がった彼。
どうやら「噂」の真相を自分の目で確かめに行くつもりらしい。
営業ならではの行動の早さだった。
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