ドーム爺さん

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ドーム爺さん

 アユタに教わったドーム爺さんの家は、この町でも珍しい高台にあった。高台といってもまるで教科書の写真で見た事のある古墳のような形をした丸っこい台地の上に建っていた。  町の商店街の通りから、かなり外れた場所にあって行く道すがら家の数がどんどん少なくなっていった。その代わり、だんだんに田んぼや畑が広がっていって、道も細くなっていった。この町にこんなに田んぼや畑があったんだ。たまに農作業をしている人が居たけどこんな町の外れまで一人でくることがなかったので少し心細くなってきた。来なきゃよかったかなと少し弱気になっていたとき、空から「ぴぃ」というトンビだろうか鳴き声が聞こえた、見上げるとその大きめの鳥は一度高く舞い、円を描きながらドーム爺さんの家の建つ高台を覆う森の中に消えていった。学校の教室の窓からアユタの指差す方を見たときより、実際の高台の森は深かった。だいぶ近づいたつもりだったが、まだ目指すドーム爺さんの家は見えなかった。 「ホントにここかなぁ」  ドームの屋根を目指して来たつもりだったけど、つい独り言で弱音がでていた。アユタは仲の良い友だちだけど心細さからアユタの情報を少し疑いたい気持ちになっていた。  昨日の給食の後の昼休みのときだった。 「だったらドーム爺さんのとこに行って訊いてみたら」  アユタが言い出した。アユタはクラス、いや学年でも名の知れた情報通だ。とても小学生とは思えない。特に勉強ができるわけじゃない、まるで近所の主婦並みに町の情報、というより事情について詳しいのだ。僕は何かと困ったとき(勉強以外)に頼りにしている。 「ドーム爺さん?」 「そう、ドーム爺さん」 「なに?」  横からミウがキンキン声で割って入ってきた。 「あたし、知ってるよ」  声に振り返るとミウが居た。  ミウは、僕とアユタが話をしているときっと、僕たちの視界の外から忍び寄ってきて二人の話をインターセプトする。今日は僕の背後から音もなく忍び寄って来たのだ。 「天文オタクのじーちゃんで、知る人ぞ知る有名人よ、お姉ちゃんが言ってた」 「天文オタク?」僕が違和感を感じていると 「ミウちゃん、天文やってる人は、ほぼ必ずオタクだよ、だから天文オタクっていう言い方はちょっと変じゃない」 「天文やっているイコールオタクってこと」 「そういうこと」アユタは妙に得心した顔でミウを見ながら
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