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でも、あの時涙を流した事で僕らは、本当の意味でEGGにまつわることに深く関わったという自覚に目覚め、話し合うこともなく共有したんだ。
こんな思いを僕らに抱かせたとおじさんは後悔するだろうけど、そんなことはもうどうでもいい事だ。僕らも、既に当事者になっている。それをもう拒むことはできない。僕らも受け容れなければならない。受け容れなければ僕らはきっと後悔する。
特にエレンとの出会いを終わらせるわけにはいかない。エレンに対する一方的な思いだけを胸にして、それぞれの日常に戻るわけには行かない。
エレンの身に起こった事を知っているのに、知らないでいる僕らにはもう戻れない。たとえ、戻れたとしても、それは自分にウソをつく事になるんじゃないか。
あの事故の十字架をエレンひとりが抱えているなんてもう我慢できない。おじさんや黒崎さんがエレンのために手を尽くしたこともわかるんだけど、だからと言って、知ってしまった僕らが子どもだからといって指をくわえているのは我慢がならない。
こんな思いを抱えたまま宇宙なんて目指せない!そんなの意味ない!
そんな僕らの気持ちが一時的な感傷でないことの証として僕らはエレンに会って、そして気持ちに揺るぎがないことを確認できたならば、たぶん、僕らにしかできない何かをしてあげられることができると考えたんだ。もちろんエレナも一緒に。
おじさんに見せてもらったEGGのテストのシーンを僕らは思い出していた。沢山の大人に囲まれて笑顔でいたエレンを。僕もミウもアユタもエレンに自分を投射した。エレンは賢い子だったっておじさんは言ってた。でも、その時のエレンの気持ちは大人には理解らない。いくら賢いといっても僕らと同じ五年生の女子だ。
「エレンは一人ぼっちなの、きっと」
ミウは、それを直感的に感じた。そして僕やアユタに説いてくれた
おじさんや自分の父親の研究のためとはいえ、それは大人の都合ってやつで、それでも賢いエレンは自分を殺して、子どもなのに大人の立場へ自分を無理に合わせていたんじゃないかと。
僕も職員室に呼ばれて担任の先生の前に一人でいると、職員室の知らない先生達の視線にさらされているような何処にも行き場のない気持ちになっちゃうけど、でも、その比じゃないだろう。
「EGGの事故が秘密にされたんだから、二年以上ずっと一人ぼっちで眠ってるよね」
アユタが応えた。
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